身体活動と脳の機能
2012年4月24日|栄養管理士コラム
身体活動は、脳への血液循環を促進することが知られています。脳は加齢とともに委縮しますが、よく歩く人ほど脳が委縮せず、認知症になりにくいことがアメリカの研究*により示唆されました。
この研究では、65歳以上の1479名を対象に、1週間に歩くブロック数(距離)と脳の大きさ・機能の関係を調査し、追跡から9年後の時点で、MRI検査により、脳の灰白質(脳の神経細胞の集まり。神経細胞の細胞体が存在している部位)の体積を評価し、認知機能が正常な299名について、歩行距離と灰白質の体積との関係を検討しました。その結果、歩くブロック数(距離)を4段階に分類すると、一番多く歩く群は、それ以外の群に比べ、灰白質が有意に大きいことがわかり、また1週間に10~14km歩く人は、それ以下の人に比べ、灰白質が有意に大きいことがわかりました(それ以上歩いても違いはなし)。また、脳の大きさとの関係を見た場合、身体活動により灰白質の体積が維持された人では、認知機能障害の発症リスクは半分になることもわかりました。今回の研究から、身体活動と灰白質の体積との因果関係を言及することはできませんが、よく歩く人ほど(10-14km/週以上)脳の灰白質の体積が維持され、また認知症になりにくい可能性が示唆されたことは、歩くことの重要性を再認識するきっかけにもなりそうです。
(参考*K. I. Erickson, et al. Physical activity predicts gray matter volume in late adulthood. Neurology. )
糖尿病、禁煙5年まで発症リスク高く
2012年3月17日|栄養管理士コラム
喫煙が健康に及ぼす影響が大きいことは、誰もが知っていることですね。例えば糖尿病発症の場合、喫煙者は糖尿病になる危険性は、たばこを吸わない非喫煙者に比べ、男性で1.3倍、女性で3倍に高まることが知られています。さらに先日、禁煙しても禁煙5年未満は発症リスクが高いままである(*)ことが、国立がん研究センターを中心とした研究チームによる全国約6万人の追跡調査で明らかとなりました。
研究チームは10都府県の40~69歳の男女計約6万人を10年間にわたり追跡し、糖尿病の発症状況を調査。その結果、喫煙者は男女ともに非喫煙者に比べて糖尿病を発症するリスクが高い傾向にあることが確認されるとともに、禁煙して5年未満の場合、男性は非喫煙者に比べ発症リスクが1.42倍と高いままで、禁煙前に比べ体重増加が少ない男性も、非喫煙者に比べ糖尿病発症リスクが高まることがわかりました。同様に禁煙後の女性が糖尿病になるリスクは、非喫煙者より2.84倍高かったものの、女性の場合は調査対象者が少なく、誤差が大きい可能性があるとみられています。さらに男性の場合、禁煙前に吸っていた1日当たりの本数が多いほどリスクは高く、1日25本以上だと2.15倍高く、一方5年以上禁煙していると、吸わない人と同程度までリスクが下がることもわかりました。研究チームは、「禁煙後も一定期間は糖尿病発症リスクが高い状態が続くので、禁煙から少なくとも5年間は健診などで体調に配慮することが大切」と話しています。禁煙に成功しても、すぐに疾病(糖尿病)発症リスクが低減するわけではないようです。
(*参考 Oba S, et al. Smoking Cessation Increases Short-Term Risk of Type 2 Diabetes Irrespective of Weight Gain: The Japan Public Health Center-Based Prospective Study. Plos ONE 2012. 毎日新聞ほか)
睡眠時間と糖尿病発症リスク
2012年2月10日|栄養管理士コラム
皆様の睡眠時間はどれくらいでしょうか?睡眠不足と感じることなく、また質の良い睡眠(ぐっすりよく眠れる)がとれていらっしゃいますか。今回は、糖尿病専門国際誌(Diabetes Care. 2012;35(2):313-318)に掲載された、睡眠時間と糖尿病発症リスクとの関連について検討した日本の研究をご紹介いたします。
この研究では、2003年度(2003年4月~2004年3月)に糖尿病ではない35-55歳の男女3,570人を対象に、睡眠時間や睡眠の満足度(睡眠の質)について調査しました。その結果、2007年度までの4年間に121人が糖尿病を発症、そのうち糖尿病家族歴がない(親や兄弟に糖尿病患者がいない)人において、睡眠時間が5時間以下の人は7時間を超える(>7時間)人と比べ、糖尿病発症リスクが5.37倍高いことが明らかとなりました。さらに、睡眠不足を感じている人は感じていない人より6.76倍、「夜中に目が覚めることが深刻な問題である」と答えた人は、そうでない人より5.03倍、それぞれ発症リスクが高いことがわかりました。
忙しくストレスフルな毎日を送っているであろう多くの現代人にとって、7時間超えの良質な睡眠を確保することは容易ではないかもしれませんが、糖尿病発症を予防する上で重要な因子であるようです。良質な睡眠は万病予防にも通じるかもしれません。
日本人の健康自己評価、低い傾向
2012年1月27日|栄養管理士コラム
皆様は現在のご自分の健康状態に満足されていらっしゃいますでしょうか。昨年、日本と欧米、中国、インドなど計12カ国で18歳以上の約1万5千人に聞き取り調査をした、米PR会社エデルマンによる『ヘルスバロメーター』という調査によると、日本人は他国の人たちに比べ[自分は不健康]と思い、生活習慣の改善に取り組む人が多いが、1/3は挫折した経験がある、という結果が発表されました(日本からは千人が回答)。
全体的に健康状態が良いと答えた人は12カ国平均で64%、先進国の多くが60-70%台、インドでは92%に上がったが、日本は33%で最低で、不健康の要因には、「運動不足」を上げる人が64%ともっとも多かったということです。また、生活習慣の改善を試みたことのある日本人は73%で、そのうち36%が挫折を経験しており、挫折の理由として「健康状態に変化が見られなかったから」と答えた人が多かったようです。自分自身の健康状態に危機感を募らせている人は多いものの、定着してしまった生活習慣を改善させるのは難しい実情がうかがえます。健康を考える上で、運動習慣は不可欠ですが、マイスポーツでは、あらゆる年代の方に対応できる運動プログラムの改良・開発に取り組み、皆様の健康維持・増進に貢献できるよう日々努めてまいりたいと思います。
紅茶の消費量が多いほど糖尿病有病率減少
2012年1月14日|栄養管理士コラム
今回は紅茶の摂取量と糖尿病発症との関連についてです。第21回世界糖尿病会議(2011年12月開催ドバイにて)で発表された興味深い研究結果についてご紹介いたします。
今回の研究は、ユーロモニター社が実施した国際貿易調査のデータを利用し、世界50カ国の一人当たりの紅茶の消費量を推定し、疾病の疫学データはWHOのデータを用い、5つの重要な疾患(がん、糖尿病、心血管疾患、感染症(結核、HIV)、糖尿病)発症との関連について検討しました。解析の結果、紅茶の一日の摂取量と糖尿病発症との関係が負の関係にあり、一日の紅茶摂取量が多い国ほど糖尿病発症率が低いことがわかりました(その他4つの疾患発症については、紅茶消費量との相関なし)。今回の研究結果では、紅茶の摂取量と糖尿病発症との因果関係については言及できませんが、動物モデルの研究では、紅茶の高血糖抑制作用が報告されています。また、紅茶に多く含まれるテアフラビンには腸管における糖吸収の抑制作用が、フラボノイドには抗肥満効果が報告されていることから、これらの成分を通じて糖尿病発症抑制に寄与した可能性が考えられています。ふだん何気なく飲んでいる嗜好品で(最近は脂肪燃焼効果をうたったお茶を意識的に飲んでいる方も増加中?)、健康効果があるのなら嬉しいものですね。


